先日公表された会計検査院の令和5年度報告において、取引相場のない株式の評価について、「株式の評価の公平性が必ずしも確保されているとはいえない」として、改正勧告とも取れる報告を行っています。
取引相場のない株式は、財産評価基本通達(評価通達)によれば、株式の発行会社(評価会社)の規模及び株主の区分に応じて異なる評価方法により評価していますが、原則的評価方式として次の3つの評価方式があります。
① 類似業種比準方式 これは1株当たりの類似業種比準価額により評価 →会社の業績等を表す3要素について類似業種と評価会社とを比べて、相対的に株式を評価
②純資産価額方式 これは1株当たりの純資産価額により評価
③併用方式 これは類似業種比準価額と純資産価額を併用することにより評価
報告によれば、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%となっており、類似業種比準価額は、純資産価額に比べて相当程度低い水準と指摘。
例えば、計算式に類似業種比準価額が用いられている類似業種比準方式(①)及び併用方式(③)による各評価額は、純資産価額方式(②) による評価額に比べて相当程度低く算定され、各評価方式の間で1株当たりの評価額に相当のかい離が生じている状況 ・純資産価額に対する申告評価額の割合の分布状況をみると、その中央値は、大会社0.32倍、中会社0.50倍、小会社0.61倍と指摘しています。評価会社の規模が大きい区分ほど株式の評価額が相対的に低く算定される傾向がみられます。
近年特に富裕層に衝撃を与えた国外中古建物に係る損益通算制限の措置は、平成27年度会計検査院報告を受け、令和2年度税制改正で導入され、令和3年から施行された経緯があります。このことから、本件類似業種比準価額に係る評価方法も近々に税制改正が行われる可能性が高いことから、現行法上のルールに基づき税務計画を行っている納税者におかれましては、早急に対策を検討・講じることが肝要と考えます。詳細はお問い合わせください。